ひと 依存症を克服した元患者らのパレードを企画した 笹井健次さん(47)
どうしようもない酒飲みだった。国立大を出て就職した大手電機メーカーでエンジニアとして働く一方、ほぼ毎日、朝まで飲んで酒のにおいをさせて出勤していた。
その酒を断って10年。23日に東京・新宿で日本初のリカバリー・パレード「回復の祭典」をする。アルコールや薬物、ギャンブルなどさまざまな依存症を克服した人と家族、友人ら約200人が回復を祝い、その姿を社会に訴える。将来は5千人規模にするのが目標だ。
「依存症という病気への社会の無知、偏見を取り除きたい。誰でもなるし、また回復も可能なのだということを知ってもらいたい」
いい子を演じ、親に反抗することなく育った。人に嫌われたくない。いつも注目してもらいたい自分がいた。満たされない心を大酒で埋めるようになったのは20代後半。結婚して子どもができてからだ。
妻(46)をけとばし、自宅の屋根に白いペンキで名前を書いた。家族は何度も家を出た。あげくの果ては朝帰りでビールを飲み、バイクで出勤。車と衝突して大けがをした。
もう限界と、36歳の時治療のために3カ月半入院した。依存症について学び、毎日自分と向き合った。どれだけの人にどれだけの迷惑をかけたか。その作業を続けるうちに、ダメな弱い自分を認めることができるようになって、変われた。
23日は、妻と次女(18)も歩いてくれる予定だ。それが、うれしい。
(大久保真紀、写真・川村直子)
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